業務上傷病の休業中(療養中)は解雇はできません
業務上の負傷や疾病の療養のために労働者が休業する場合は、使用者は
必要な療養の費用を負担し、休業中の賃金補償を行わなければなりません。
また、休業期間と休業終了後30日間は解雇が禁止されます(労基法19条)。
これは業務上の負傷・疾病で療養する期間、労働者が療養に専念できるように、使用者による解雇を制限したものです。本条に違反して労働者を解雇した使用者は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条1号)。
通勤災害の場合は労災保険給付の対象となるものの、解雇の制限はありません。
また、解雇制限期間中に定年に達したときは、解雇せずとも契約関係は終了しますので労基法19条の適用はないとされ(昭和26年8月9日基収3388号)、また有期雇用契約のアルバイト等の業務上傷病による休業期間中に契約期間が満了した場合にも解雇とは関係なく雇用関係は終了しますので労基法19条には抵触しません。
打切補償あるいは傷病補償年金の支給により解雇が可能になります
療養開始から3年を経過しても傷病が治癒しない場合、使用者が打切補償として平均賃金の1200日分を支払うならば、療養補償も休業補償も打ち切ることが認められるので(労基法19条1項但書、同81条)、解雇が可能になります。
また、労働者が、療養開始後3年以上経過してから傷病補償年金を受けることとなった場合は年金を受けることとなった時点で、打切補償があったものとみなされ、やはり解雇が可能になります(労災保険法19条)。
治癒後の解雇(後遺障害がある場合など)
業務上傷病の治癒あるいは症状固定後は、解雇制限はありません。したがって、治癒・症状固定後の健康状態が業務に耐えられない、代替可能な業務もない場合は、解雇もやむをえないこととなります。
退職後も労災補償は継続します
なお、労働者が退職したり定年や期間満了で雇用契約が終了しても、労災補償を受ける権利は変更されません。その際、各種手続きにおいて在職中は必要であった事業主証明は退職後は不要となります。(労基法83条1項、労災保険法12条5第1項)。