有期労働契約のポイント

有期労働契約

 

Q 先日、1年契約の契約社員として採用され、店員として働いている従業員からの質問がありました。できることなら、毎回の契約期間を長くしてもらいたく、事業主にかけあってみようと思っているのですが、長い契約期間になった場合、契約途中で退職したら、契約違反となり、辞めさせてもらえないこともあると同僚から聞いて、どうするか思案しているのですが、アドバイスをお願いしたい、と。

 

 

 

 

有期契約に関する労働基準法の決まりごとをまとめると次の通りです。

 

  ※ただし5年を超える労働契約についてはこちら

 

質問者への回答はポイント3を読めばわかります。

 

安心してください。1年を超える3年以内の労働契約については、1年経過後労働者はいつでも退職できます。法的に、辞められないということはありません。

 

ポイント 1、雇用期間の定めがある労働契約の契約期間の上限は原則3年、高度な専門的知識等を有する労働者および満60歳以上の労働者は特例として5年。(期間を定めて契約してもいいことになっている上限期間です)

ポイント 2、有期労働契約の明示、更新、雇止めの基準は法で定められている(労働基準法142)書面の交付が必要です。

ポイント 3 1年を超える3年以内の労働契約については、1年経過後労働者はいつで

      も退職できます。

       事情がある場合、事業主に申し出て任意の時期にやめることができます。

       違約金など必要ありません。当初の契約期間を理由にしばられることはあ

      りません。

ポイント 4 専門的知識を有し、1年を超える5年までの労働契約を結んだ場合は、原則として契約期間内に退職できないようです。違約金が生じるかどうか、契約内容によります。

 労働契約の上限

 

 労働契約期間の上限は、期間の定めのないものを除き、原則3年です(労基法141項)。

 期間契約を反復更新することは可能です。

 期間の定めがない、とは就業規則による定年年齢等に達するまで雇用する契約という意味です。

 

 1年を超える3年以内の労働契約については、初日から1年を経過した後は使用者に申

 し出ることにより、いつでも退職することができます。(労基法137条)。

  専門的知識、技術または経験であって高度なものとして厚生労働大臣が定めた特例基準

 のなものは次のとおりです。

 

  1. 博士の学位を有する者(外国で授与されたこれに該当する学位を含む)

 

  1. 次のいずれかの資格を有する者

 

  1. 公認会計士 (2) 医師 (3) 歯科医師 (4)獣医師 (5) 弁護士 (6) 一般建築士

 

  1. 税理士 (8) 薬剤師 (9) 社会保険労務士 (10) 不動産鑑定士 (11) 技術士

 

  1. 弁理士

 

  1. システムアナリスト試験、アクチュアリー資格試験に合格した者

 

  1. 特許発明者、登録意匠創作者、登録品種育成者(いずれも法に規定されたもの)

 

  1. 特定の専門的知識等を有し一定の実務経験がある者で、年収が1075万円を下回らない者

 

  1. 国等により有する知識等が優れたものであると認定された者

 

有期労働契約の締結、更新および雇止めに関する基準

 

 この基準(平成15年・厚生労働省告示第357号)は08年に改正され、雇止めの予告の対象範囲が拡大しました。この基準に関して行政官庁は、使用者に対し助言、指導をすることができます(労基法143)

 

 

 

 

1 契約締結時の明示事項

 

  1. 使用者は、有期労働契約の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示すること。

  2. 更新する場合またはしない場合の判断の基準を明示すること。

  3. 変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示すること。

    通達では、「更新の有無」について、①自動的に更新する、

    ②更新する場合がありうる、③契約の更新はしない、を例示しています。

    また「判断の基準」については、①契約期間満了時の業務量、② 労働者の勤務成績、③ 労働者の能力、④ 会社の経営状況、⑤ 業務の進捗状況、などが考えられるとしています。これらについて書面による明示が望ましいとしています。

 

2 雇止めの予告

 

 使用者は、雇入れの日から1年を超えて継続勤務している場合、および3回以上更新されている場合、有期労働契約を更新しない場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をすること。

 

3 雇止めの理由の明示

 

 使用者は、労働者が更新しないまたは更新されなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なく交付すること。

 

4 契約期間についての配慮

 

 使用者は、有期労働契約を更新する場合は、当該契約の実態および当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めること(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に限る)。

 

 

 

 労働基準法

  第二章 労働契約

(この法律違反の契約)
第十三条  この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。
(契約期間等)
第十四条  労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
 専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
○2  厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。
○3  行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

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